設計のコツを知ると、家づくりがもっと楽しくなる [2]設計編

コラム

初めて家づくりをする方にとって、家づくりは「わからないことだらけ」ではないでしょうか。資金計画に始まり、土地探しや間取り、デザイン、家具、照明などなど、家づくりには考え、選択しなければならないことが多くあります。ひとつひとつのステップを納得して進めていくためには、そしてそのプロセスの不安を解消するためには、どうしたらいいのでしょうか。

 

家づくりのよくある質問や疑問に対して、村瀬充アトリエ代表・村瀬さんがどう考えているのか答えていただき、それをまとめました。設計のコツやタネ、ヒントについて紹介していきたいと思います。設計のコツを少しでも知ることができれば、何から考えればいいのか、どのように行動していけばいいのか、ステップが見えてくると思います。

 

 

今日は、設計や設計プロセスについてお話します。

 

 

LDKの一体空間をつくる際に、気を付けていること、
耐震性能や断熱性能について教えてください。

 

LDKの一体型空間とは、L(リビング)、D(ダイニング)、K(キッチン)の間に壁がなく、空間を仕切らずに開放感を出した間取りのことです。昔は、キッチンが独立した間取りが主流でしたが、近年ではLDKがひとつの空間内に配置された間取りが注目を集めています。村瀬充アトリエの施工実績でもよく見かけるLDKの一体空間ですが、つくるときに気を付けたほうがよいことを伺いました。

 

“一体空間は開放的であり、大きく部屋を使用することができ、積極的にプランに取り入れていますが、断熱性やプライバシーなどの問題も生じてきます。
断熱性に関しては、外皮(建物の外部と内部を隔てる境界のこと)に対して十分な断熱性能を持たせた仕様(標準は発砲ウレタン吹き付け)を設えています。また、プライバシー性に関しては、可動扉や造作棚等で視線を回避したり程良い目隠しとしての仕様を設えています。”

 

(例)断熱性能を持たせた仕様

断熱のイメージ

 

断熱のイメージ

現場まで足を運び、設計通りの工事が行われているか細かくチェックを行い、その後の報告も行っているそうです。「家づくりの流れ」でも詳しく説明しているので、参考にしてください。

 

 

 

 

“開放的な空間は耐震性能が良くないと思われがちですが、壁量を確保するために面材を設けたり、スパン(建物を支える柱と柱の距離のこと)が飛ぶ梁にて構造体を構成して、将来の間取り変更に対しても、柔軟に対応できるような構造設計を行っております。建物の基本ベースは、耐震等級3を基準にしています。
また、最近は突風や台風等による建物崩壊の事例が多いことから、特に耐風圧を考慮して、耐風等級2を基準にした設計を行っています。”

 

(例)筋交い(建物の構造を補強するために斜めに入れる部材)と
壁面を一体化して、耐力壁を構成

筋交いのイメージ

 

(例)大空間を構成した構造架構

構造のイメージ

 

お施主様の想いを汲み取った家づくりを行うことと同時に、最近の気象現象(竜巻や突風、地震など)にも考慮して設計されていることがよく分かりました。

 

 

 

“また、構造設計は弊社の協力設計事務所である、構造一級建築士の資格がある専門の構造設計事務所に委託し、設計、設計監理を一緒に行っております。
設備設計に関しても、専門の設備設計事務所に委託し、省エネ基準に基づいた設計を行っております。”

 

第三者機関が入ることにより、ミスを防ぐ、減らすことができることが分かります。現場や設計プロセスにおいて緊張感が生まれ、設計・工事の質の向上、維持につながると感じました。

 

 

 

 

スキップハウスやコートハウスについて、
良い点・悪い点それを改善する方法などを教えてください。

 

スキップハウスとは、段差を活用してさまざまな高さのフロアを設ける住宅のことです。スキップフロアの視覚的な楽しさや明るい開放感は、家づくりを考えている方にとっては、ぜひ取り入れてみたい要素ですよね。メリットデメリットを整理しておきたいところです。村瀬さんに質問をぶつけてみると、こんな答えが返ってきました。

 

【スキップハウスに関して】

良い点

  • 開放的にそれぞれの空間が繋がる、視線が通る魅力のある空間が演出できる
  • 階段(移動)空間を魅力的に演出できる
  • パブリックゾーン(家族ゾーンやキッズリビング等)をスキップ空間にすることで家族の気配がどこに居ても感じられる空間が演出できる

 

悪い点と対応方法の例

  • 開放的な空間のため、熱効率が弱くなる(可動扉、ブラインド等にて対応)
  • 段差を積極的に取り入れるため、場合によってはつまずきやすくなる(ルンバの対応が難しい、台数が増える)

 

(例)家族ゾーンをスキップ空間に配置

スキップフロアのイメージ

「Tongari Hut」施工実績を見る

 

(例)リビングをスキップ空間に配置

スキップフロアのイメージ

「カイハウス」施工実績を見る

 


(例)子供部屋をスキップ空間に配置

スキップフロアのイメージ

「光風を包み込む家」施工実績を見る

 

 

豊富な実例が揃い、敷地や建物の形状に応じて、良い効果を積極的に取り入れ、活かしていることが分かります。段差を活用して、収納や座る場所を作ることができ、家族のコミュニケーションも自然と深まりそうだと思いました。

悪い点も同時に提示してもらい、そのことについて理解しながら進められるので、デメリットをどのように解決するのかということも含めて、自分たちの家づくりを楽しむ一つの要素としてとらえることができそうです。

 

 

 

 

コートハウスについても伺いました。
コートハウスとは、建物の内部に壁や塀で囲まれた中庭があるスタイルの住宅のことです。太陽光の入る明るい環境や外部からの視線を遮断して、家族だけのプライベートな空間を作り、内外一体の空間を楽しむことができます。


【コートハウスに関して】

良い点

  • 部屋ごとにコートと繋がる空間が演出できる
  • 風、光が通る空間ができる
  • 外部と繋がる、開放的な空間が演出できる
  • コート外部の設え方により、プライバシー、セキュリティが充実できる

 

悪い点

  • コートの仕様(植栽等)によっては、手間がかかる
  • プライバシーを考慮する必要がある
  • 開口部が増えたり、建物のカタチが複雑になり、コストがUPする

 

 

(例)キッチンダイニングと寝室の間にコート空間を配置

コートハウスのイメージ

「Mothership terrace」施工実績を見る

 

 

(例)リビングダイニング、寝室、子供部屋に面して中央に配置

コートハウスのイメージ

「ソラノイエ ダイチプラン Nさんスタイル」施工実績を見る

 

 

(例)LDKと寝室の間に配置
(コート空間をアクティブに使用する)

コートハウスのイメージ

「ロッククライマーの家」施工実績を見る

 

どのコートハウスの実績を見ても、周囲の視線を気にせず明るさも確保でき、快適な印象がありますね。
コートハウスは敷地や環境に応じた設計が必要で、構造が複雑になるので、構造の知識と実績が豊富な方に依頼したいところです。これだけの実績を見ると安心して依頼することができると思いました。

 

 

 

 

 

木のぬくもりを感じる住まいが多いと思います。
木の風合いについてどのように感じていますか。
また木造の良い点悪い点を教えてください。

 

木の良い香りがする家って魅力的ですよね。木を基調とした空間は見た目にもあたたかみがあって、穏やかな印象を受けます。村瀬充アトリエの施工実績を見ていても、木を基調とした住まいを多く見かけます。村瀬さんは、「木」の魅力について、どのように考えているのでしょうか。

 

 

良い点

  • 木の特性である、手触りの良さや匂い、経年による趣を感じることができる
  • リノベーションに柔軟に対応できる

 

悪い点

  • 4方向を開放的にする空間は難しい(壁量の関係)
  • 選木、使用する材質により、コストがUPする

 

 

(例)尾鷲桧、杉を構造、仕上げにて使用

木の家のイメージ

「光風を包み込む家」施工実績を見る

 

(例)尾鷲桧、杉を構造、仕上げにて使用

木の家のイメージ

「光風を包み込む家」施工実績を見る

 

 

天井や柱、床にたくさんの木材を使っていますね。柱や梁、床材などに使うだけでも、木の心地よい香りとぬくもりを感じることができると思います。

 

 

 


塗り壁の住まいも多くつくられています。
塗り壁についての考え方を教えてください。

 

自然素材を原料として、左官職人の手作業で仕上げられる塗り壁は、独特の風合いや味わいが魅力です。良い点はなんとなく見聞きして知っている人も多いと思いますが、気を付けたい点を抑えておきたいですね。

 

良い点

  • しっくい(湿気)、珪藻土(温度調整、臭気を防ぐ)の特性を活かした使用方法によって、快適な空間をつくることができる
  • 経年に伴った味わい、質感を感じることができる

悪い点

  • ワレ等を生じないように施工(下地)手間を考慮する必要がある
  • コストUP

 

 

(例)漆喰にて壁、天井を設えた

塗り壁のイメージ

「細長敷地の家」施工実績を見る

 

 

(例)珪藻土にて設えた

珪藻土の壁のイメージ

「光と風が遊ぶ家」施工実績を見る

 

 

(例)外壁を漆喰にて設えた

塗り壁の外壁のイメージ

「L型のコートハウス」施工実績を見る

 

塗り壁には、いろいろな仕上げ方があり、壁材の種類も豊富なようです。材料や仕上げについて迷うことがあると想像できますが、村瀬充アトリエの「家づくりの流れ」を参照すると、定例会議やお施主様との協議でよく話し合って選択、決断されています。質感などをサンプルで確かめた上で、共通の仕上がりイメージを持って家づくりを進めていることが分かります。

 

 

 

さまざまなプロセスの中で間取りを変更したいなど、
大幅な変更などが出る可能性がありますが、
それについてどのように考えますか?

 

“お施主さんご家族さんが、「理想の住まい」「希望の住まい」をつくる上で、納得のできるプロセスを求めています。設計プランや仕様の変更が生じるのは普通であり、大いに歓迎して、比較検討できる図面や材料などの資料をつくり、「お施主さんらしさ」を建築、空間に演出できるように考えています。”

 

一般的に私たちは、設計の仕事を行う人たちには「こだわり」を持つ人が多いのではないかという漠然としたイメージがあります。しかし、村瀬さんの場合は、お施主様の想いを尊重しながら、より良い空間を構築するという本来の「お施主様の家をつくる」ということを忘れずに、考えていただけることが分かります。

さらに、新たな図面や資料を提示し判断を任せてもらえる、依頼する側の想いに寄り添ったプロセスは、とても安心できるものではないかと思います。

 

 


 

 

今日は設計編をお届けしました。

村瀬さんとお話ししていると、純粋に家づくりがもっと楽しくなると感じます。理想の住まいでの暮らし方も、今以上に具体的にを想像できるのではないでしょうか。設計のコツやタネ、ヒントについて知ることで、あなただけの家づくりを心から楽しんでほしいと思います。

 

上記以外にも村瀬さんに聞いてみたいこと、相談してみたいことなどございましたら、お気軽にこちらから、問い合わせてみてくださいね。
よくいただくご質問」にもQ&Aが掲載されているので、参考にしてください。