国境を隔てた設計で実現した、ご夫婦二人のついの住処

Story #03

国境を隔てた設計で実現した、ご夫婦二人のついの住処

岐阜県岐阜市 M様

M様との設計プロセスは、海外在住のご主人様と進めていく、という少し変わった形でした。

zoomなどが普及していなかった当時、国境を越えたプロセスは大変チャレンジングなものでしたが、現地まで赴き、異国でお打ち合わせをする、という経験もなかなかできるものではありません。
大変楽しく、勉強にもなったプロジェクトでした。

長いホテル住まいからの家づくり

奥様は日本在住、ご主人様は海外赴任でシンガポールに在住、と別々に暮らしていらっしゃるご夫婦でした。

もともとご主人様が転勤族でいらっしゃり、日本国内だけでなく海外赴任も長かったとのこと。

そんな中、引退後の住処として選ばれたのが岐阜の街中でした。

ふらっと歩いて飲みにいってふらっと帰ってこれる、そんな居心地のいい環境が気に入られたとのこと。

岐阜市内での土地探しから、ご一緒に携わらせていただきました。

日本・シンガポール間という、遠方でのプロセス

ようやく土地が決まり、設計に入る段階も、ご主人様はずっと海外在住です。

当時はまだ、zoomのようなオンラインツールは普及しておりません。

LINEは普段のお施主様とのやりとりから使用していましたので、それならばとLINE電話をフル活用し、日本の奥様も交え、何度もお打ち合わせを重ねました。

直接お会いして話し合いを重ねるような普段通りのプロセスを踏めない中でも、絶対に120%以上の設計をしたい。

そのことだけしか頭にありませんでしたので、シンガポールまで足を運ぶことも何度もありました。

求められていたのは、ホテル住まいのような暮らし

ご主人様は海外での生活が長く、長いことホテル住まいをなさっていたこともあり、

ベッドから起きたら、すぐにテーブルで食事ができ、すぐにお風呂にも入ることができる。

そんな、ホテルのような暮らし方をご希望されていました。動線がスムーズで、コンパクトな空間にしようと計画をはじめました。

また、コンクリートとガラスの素材感がお好みだともお伺いしておりましたので、ガラスとコンクリート打ちっ放しをふんだんに活かした空間づくりを意識しました。

寝室とキッチンダイニングの間には扉などは使用せず、一空間としています。

全面ガラスの中庭と廊下で挟むことによって、しっかりと空間の境目を演出しつつ行きたいときにはすぐに行ける、そんな気軽さも両立させました。

プロセス中の距離を感じさせない上質なコートハウスへ

国境を越えて設計を進めていく経験は何から何まで新鮮で、すべてが大変勉強になりました。
シンガポールやバンコクまで家の模型を持って行き、空港の荷物検査で止められたことも今ではいい思い出です。

遠方だからと電話のみで済ますこともできました。
ご主人様にも海外でのお打ち合わせに度々お付き合いいただき、大変ご苦労もおかけしたと思います。

それでもやはり、図面を一緒に見ながら直接話し合うことを大切にして本当によかったと思っています。
そこでわかる温度感、表情からよみとれるもの、その1つ1つのすべてが私にとって大切なフィードバックであり、みなさまの想いを込めた家を創るための大切な材料なのです。

家づくりへの想いがあれば、距離は関係ない。
そう確信したプロジェクトでした。