設計のプロセス
木造の耐震補強の考え方について
コラム
ゴールデンウィークに発生した、石川県の能登沖地震は、学生時代に慣れ親しんだ場所であり、とても身近に感じ、状況を注意深く見守っています。
マグニチュード6.5、震度6強の数値は、熊本地震と同じであり、とても大きな地震であったことが分かります。熊本地震では、9千戸の家屋が被害を受けました。
日本家屋は、瓦(土葺き)の屋根であり、重量が重く、1階が縁側等や田の字間取りの開放空間になっているため、壁面が少なく柱で上部の荷重を受けています。
また、南側が開放的な構成になっているため、南側に対して耐力壁となる部分が少なく、東西の揺れには非常に弱い状況です。
柱と梁の接合部は、金物等で接合していないため、揺れによっては引き抜かれたり、ひし形に変形したりと、力がうまく柱に伝わらなく、座屈が発生し崩壊する可能性が高くなります。
阪神淡路大地震後は法改正によって、柱や梁、土台の接合部に関して金物を取り付ける仕様になったり、壁配置のバランスチェック等により耐震基準が上がっていますが、旧耐震の昭和56年以前の建物も多く、約60%は耐震補強が行われていない現況です。
弊社では今までに、4件の在来木造住宅の耐震補強を行うリノベーションのプロジェクトがありました。
どの建物も耐震診断を行うと、大きな揺れにより崩壊する可能性があり、現行の耐震基準に適合した耐震設計を行いました。
検証する項目・方法は、下記の内容になります。
①屋根の重量を軽減する
瓦(土葺き)仕様をガルバリウム鋼板や軽量瓦に変更する
②2階の重量を軽減する
使用しない部屋を吹き抜け空間にしたり、耐力壁を新設する
③接合部(柱と梁、土台等)に金物を取り付け剛性を高める
ホールダウン金物やかど金物、筋交プレート等の金物を取り付ける
④耐力壁を設ける
筋交い部分に構造用合板を設え壁倍率を上げたり、耐力壁でない部分を構造用合板仕様にて耐力壁とする
⑤軟弱な地盤に建物が建っている場合は、基礎を補強する
基礎を新たに設けたり、土間コンクリートにて施す
また、耐震補強を行うと同時に、断熱性能や住宅設備の機能を上げる等、合わせて工事を行うことが多いです。
耐震補強の改修プロジェクトは、工期やコストなどが新築住宅と同じくらい掛かる場合が多く、今後の住宅の在り方を考えると二の足を踏む方が多いと思いますが、
住宅内の一部分の居室をシェルターとして、その部分は崩壊しにくい設えとして命を守るスペースを確保することもありだと思います。
最近は、地震活動が活発化しており、耐震補強の認識も増してくると思われますが、安全なシェルターとして住宅の耐震化がより一層進むことを願っています。